玩具館と組み木のお雛さま

倉敷で生まれた玩具として、小黒三郎さんの組み木のお雛さま誕生秘話をご紹介します。

小さな木片を手にとって組み合わせて飾る、パズル遊びのような楽しさ。

木のお雛さまの温かくて素朴な美しさ。

小黒さんのお雛さまは、ここ日本郷土玩具館の雛人形たちとの対話から生まれました。

2003年小黒三郎さんが雛の創作20周年にあたり、当プラスワンギャラリーで記念展を開いて下さったときの手記にその誕生秘話が綴られています。


『大切なテーマとなったお雛さま』   小黒三郎

 鎌倉から倉敷へ移り住んで、仕事柄まず日本郷土玩具館を見学した。そこで郷土玩具のお雛さまを眺めているうちに、紙雛の形の端正さ、単純化された形の美しさにハッと心を打たれた。動物ばかり作ってきたぼくにとって、人形の素朴な表情や和の形は新鮮なものとして写った。また、木の雛が少ないことにも気づかされた。組み木の新しいテーマとして、お雛さまを作り始めて20年が経った。

 始めに作った「角雛七段飾り」は、日本郷土玩具館のコレクションとして、今も館内に飾られている。〈※注〉'83年の暮れから正月にかけて、ぼくは雛の作図に没頭したのを覚えている。同年11月、ジャパニーズ・モダンの形をぼくに勧めて下さった勝見勝さんが突然亡くなられた。お見せして批判を仰ぎたかったぼくの思いは果たせぬまま、'84年2月1日から、始めてお雛さまのみによる個展を日本郷土玩具館で開いた。前夜、倉敷に大雪が降って、初日は白い世界だったのを覚えている。

〈※注:現在は常設展示は行っておりません〉

小黒三郎 組み木雛人形段飾り初作「角雛七段飾り」